w4mui9zxra期末試験の中日。学校から新子安の駅へと
皆、走って帰っていく。

早く帰って、明日の試験に臨むためだ。
「なんて馬鹿らしいことだ。」
と思うが、
当時はそういうものだと皆思っていた。

考えてみると、恐ろしい世界だ。

学校の成績が良ければ、性格も良く、成績が悪いのは、性格も悪い。
そんな事はあり得ない。

まあ
当時は「成績一番」そういうものだと思っていたのです。

横浜駅から幸運にも、その日は座る事ができた。

鞄から英語のテキストを取り出しイディオム（熟語）の暗記をはじめた。

保土ヶ谷駅を過ぎた頃から、
何か肩が重たい。
隣に座っていた女学生が、居眠りをはじめている。

時々我にかえる。そしてまた肩が重たくなってくる。

そのうち、ボクの肩を枕代わりに、寝始めた。

小さな寝息がイビキにかわった。
「うーん。なんなんだよー！」と内心思ったが、
「疲れているんだろうな？」と思う様にした。

そして、イディオム暗記に専念した。
そのうち袖に生温かいものを感じたのだ。よだれである。

「イビキによだれ」こうなると、暗記どころではない。

女学生に「すいませんが？」と囁いても、夢の中、目を覚まさない。

そのうち、北鎌倉駅を過ぎた。鎌倉駅で降りなくてはならない。

「降りますから。起きて下さい！」と言っても、目を覚まさない。

イビキは更に大きく。よだれは、学生服を濡らしていく。

内心「勘弁してよー！」

鎌倉駅を過ぎ、逗子駅を通り越し、やっと横須賀駅近くで、女学生が目を覚ました。

目を覚ますと、口のよだれを手で拭き取り、はっと我にかえったのか。
恥ずかしかったのか？

「何よあんた！なにをしたのよ！このバカ！」と降りていった。
周りのお客さん達も同情してくれた。

お婆さんがボクに
「災難だったねー。学生服がよだれで、
まあこんなに、よれよれになっちゃって。」
ヒヒヒ。
と不気味な笑いをかけてきた。

うーん。不愉快だ婆さんだ！

そして僕は、上りの電車に飛び乗った。
翌日の英語の試験も
よれよれの出来だった。

その時思った。
これからは、こっくりさんがいたら、
「剣山を肩に載せよう。」

今の私だったら、この女学生の頬に剣山を
埋め込んでいるだろうに。
人間は変わる者だ！良くも悪くも。

そして、町内でも有名な過激おじさんと呼ばれるようになった。

ショパンの「雨だれ」を聞くと
何故か、「よだれ」を思い出す。
後遺症(PTSD）だ。